買い取り業者のひとが来て、父の色々コレクションを査定していった。
最初に家の中を案内して、見てもらいたいものを伝えると、数が多くて一回では見切れないので、二回に分けて来るという。
査定士は20代半ばくらいの若い男性。
作業の流れの説明がよどみない。
何回も同じ説明をしているからすっかり覚えてしまったんだろう。
どういうきっかけでこの仕事に就いたのかなぁと想像する。
トラブル防止のために、査定中の音声はすべて録音するそうだ。
買い取り業界、色んなエピソードがあるんだろう。
業界裏話みたいなの、聞いてみたい。
早速作業がはじまる。
今日は父のコレクションの一部と、母のアクセサリーを見てもらう。
その間ネットや動画を見たりして過ごした。
1時間半ほどで作業が終わる。
値段の付くものと付かないものがあった。
父は集めることは大好きだったが、マニアックなものへの熱意は無かったようで、一般的に流通しているものがほとんどだったらしい。
お宝と呼べるものはなかった。
母のアクセサリーは、形見として取っておくこともできたけれど、サイズ的にもデザイン的にも、今後の出番はなさそうなので手放すことにした。
少し迷ったが、取っておいても結局しまい込んでおくなら、有効に使ってもらったほうがいい。
今まで見向きもしなかったものに、今後惹かれる可能性はほぼないだろう。
次回の予約をして、今日の作業終了。
作業後に、サービスセンターからアンケートの電話がかかって来た。
今日の査定士の対応がどうだったか、10点満点中何点かと聞かれる。
査定する側も常に査定されている。
作業のたびに毎回これをされているのか彼らは。
査定士さんたちは慣れっこかもしれないが、私だったらキツイなぁと思う。
夜遅く、激しめの雨が降った。
ドドド、と重たい音が響くほどの量だった。
天井に雨漏りの染みを発見してしまう。
見たくなかった。
でも、どう見ても雨漏りだった。
不思議なもので、家を手放す方向に話を進めてから、色んなところにガタが来はじめた。
キッチンの出窓のブラインドは壊れたし、換気扇の調子もおかしい。
家が持ち主の気持ちを察したかのように。
この期におよんで雨漏りとは、不安で萎える。
片付けのピッチを上げる必要がありそうだ。
押し入れにしまってある古いひな人形や五月人形、羽子板。
母のでっかい油絵。
昔のアルバム。
まだまだ大物が控えていると思うと、ため息しか出てこない。
自分は何も残さず、身軽に生きる。
そんな思いをあらためて強くする。