日々是ゆらり

ゆっくりゆらゆらたのしく

はじめの一歩

家からバスで20分くらいの場所に教室はあった。

はじめての場所に行くのは緊張する。

少し早めに着いたので、予約の時間まで近所を歩き回ってみたが、間が持たずにすぐに元の場所に戻ってきてしまう。

仕方がないので道の角でスマホを見ながら時間をつぶした。

 

そうこうするうちに予約時間。

迎えてくれたのは若い女性。

体験レッスンの⚪︎⚪︎です、と名乗り、挨拶をすると、そのひとがレッスン担当の先生だった。

 

ボードに挟んである、病院でいうカルテのような紙に、住所や名前、連絡先、申し込みの動機、過去のレッスン経験について記入。

何事も初回の時にはよくある時間だ。

 

動機は健康のため。(スポーツ代わりなので)

レッスン経験はないけれど、学生時代合唱団にいたことについて書いた。

 

書き終えると、3部屋あるブースの一つに通された。

部屋の中には電子ピアノと譜面台、大きな鏡。

ピアノとレッスンスペースの間は、時節柄ビニールカーテンで仕切られていた。

 

ビニール越しに先生と向き合う形で、レッスンが始まる。

 

カルテ?を見ながら、色々質問された。

合唱団ではどんな曲を歌っていたか、パートはどこだったか。

→主にオペラ曲を歌っていて、パートはアルト。

 

いずれどういう形で歌っていきたいか、将来的に、教室主催のライブに出たい気持ちはあるか?

→ライブに出るなんてとんでもないが、グループで歌う機会があれば参加してみたい。

 

その教室は趣味のレッスンコースのほかに、音大受験などを目指す本気のひとたちも通うので、生徒の歌へのスタンスを見分けるための質問なのだろう。わたしは完全に趣味勢、道楽勢だ。

 

最後に、何か聞きたいことは?と尋ねられ、いちばん気になっていた、生徒の年齢層について聞いてみた。

自分は年齢が高いので、浮いてしまわないかと心配だったのだ。

おばさんのくせに歌なんて、みっともない!と思われやしないだろうか。

 

先生は、10代から80代まで、幅広い年齢層の生徒さんがいますよ、と答えた。

現時点でどうかは別として、教室としては模範回答だろう。

 

たとえ気を遣って言ってくれたのだとしても、自分より上の年代のひとがいると聞くと安心できた。

 

その日は発声練習と、歌ってみたい曲を歌い、簡単なレッスンを受けて終了。

 

普段カラオケにも行かないので、ひさびさに大きな声で歌うのが非日常っぽくてたのしかった。

 

口の開け方、息を身体のどこに当てるかなど、合唱団時代以来数十年ぶりに使う感覚だ。

 

体感に集中できる時間、いいかもしれない。

これなら、続けていけるかも。

 

先のことはあまり考えず、正式に入会することにした。