発声練習の時間が好きだ。
1時間のボイトレのレッスンの中で、曲を歌う時間よりも好きかもしれない。
・口の中の空間を大きく開ける。
・高音をだすときほどお腹をしっかり保つ。
・声をこめかみのあたりに当てて響かせる。
胸に頭に、声の当て場所を変えてみる。
日常生活のなかで、ここまで自分の身体に意識を全集中する時間ってほかにない。
狙ったところに声が当たっているかどうか、探るのは体感が頼り。
雑念が入る余地はなく、「いま」に集中でき、「ととのう」感覚がある。
瞑想みたいだ、とおもう。
あぁ、これなんだよな。
学生時代の、合唱団生活を思い出す。
失恋をしたとき、自分を救ってくれたのは歌だった。
夏合宿でひたすら歌いまくっている間、失恋のショックに浸っているヒマはなく、声やお腹や周りの音、ただ目の前のことだけ意識して没入することで気を紛らすことができた。
普段は何かしら考えごとをしていて、その場にないことに意識が向いていることが多い。
あれをやらなきゃ、あの人のあの言葉はなんだったんだろう、ランチはどこに行こうか、○○の締め切りはいつだったっけ、などなど。
ボイトレに通いはじめてから、いちばん効果を感じているのは、目の前のこと以外に向けてとっちらかった意識を今この場所に戻す、チューニング作用だ。
ととのう。
その感じがほしいから、飽きっぽい自分でも続けられている。